ザ・ヘイ・ウェイン – 205年ぶりに故郷へ帰った絵
この絵はサフォークを描いていますが、サフォークで描かれてはいません。コンスタブルは何年もの夏にストゥア川のほとりで集めた油彩スケッチを携え、ロンドンのアトリエに戻ってこの大作を仕上げました。そして205年のあいだ、この絵は自分が描いたその川のそばに一度も行っていません。2026年、初めて行きました。
基本情報
- 作者: ジョン・コンスタブル(1776~1837)
- 制作年: 1821年。1821年の王立美術院展での出品時の題名は『風景・正午』でした
- 技法: 油彩・キャンバス
- 寸法: 130.2 × 185.4 cm
- 場所: イングランド・サフォーク州フラットフォード、ストゥア川
- 芸術運動: ロマン主義
- 所蔵先: ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
この作品が忘れられない理由
この画面には英雄も神話もありません。真昼の浅い流れ、荷馬車が一台、農家が一軒あるだけです。当時の絵画のジャンル序列では風景画は歴史画より下に置かれ、この大きさのカンヴァスは本来、歴史画のものでした。
コンスタブルが描いたのは理想化された自然ではなく、湿気です。イングランドの夏の空気、葉に当たる光、水の反射、そして何より空です。彼は雲を観察して記録することに何年も費やしました。スケッチの裏に日付と時刻と風向を書き込むという方法でした。
興味深いのは、この絵がイギリスでは反応を得られなかったことです。1821年に王立美術院に掛けられましたが、買い手がつきませんでした。
パリで起きたこと
1824年、この絵がパリのサロンに出品されました。結果はイギリスとは正反対でした。
フランスの画家たちを驚かせたのは主題ではなく筆致です。コンスタブルは色を滑らかに混ぜず短く切って置き、緑の上に白い点を打って光の煌めきを作りました。当時のフランス絵画の滑らかな仕上げとは正反対です。
ウジェーヌ・ドラクロワはこの絵を見て、自分の作品に手を入れました。同じサロンに出品する予定だった『キオス島の虐殺』の一部を塗り直したのです。『民衆を導く自由の女神』を描く六年前のことです。
シャルル10世はコンスタブルに金メダルを授与しました。イギリスの画家がフランスで先に認められたわけです。
その後、フランスのバルビゾン派が戸外制作を発展させ、その流れが印象派へとつながります。モネが『印象・日の出』を描く五十年前に、この系譜は始まっていました。
象徴と見どころ
なぜ荷馬車が水に入っているのか。単に浅瀬を渡る場面ではありません。木製の車輪は乾くと収縮し、輪と軸の接合が緩みます。そのため定期的に水に浸けて膨らませました。馬を冷やす効果もありました。この場面は牧歌的な風景ではなく、農具の手入れ作業です。
左の農家。ウィリー・ロットの家です。実在し、今も建っています。ロットは生涯ほとんどこの家を離れなかったと伝えられます。コンスタブルの父は近隣のフラットフォードの製粉所を所有していました。
犬。左の岸辺にスパニエルが一匹、荷馬車のほうを見ています。小さいながら、視線を荷車へ送る役割を果たしています。
空。画面のかなりの部分を占めます。コンスタブルにとって空は背景ではなく、絵の感情を決める要素でした。この画面では雲が集まりつつあります。晴れた日の正午ではなく、何かが変わりそうな正午です。
水。川面の白い点を近くでご覧ください。滑らかに塗ったものではなく、絵具を置いたものです。パリで話題になったのはまさにこの部分でした。
ジョン・コンスタブルについて
コンスタブル(1776~1837)はサフォーク州イースト・バーホルトに、穀物商で製粉所を営む家の息子として生まれました。少年時代をストゥア川のほとりで過ごし、生涯その風景に戻り続けました。今日その一帯は「コンスタブル・カントリー」と呼ばれています。
ロンドンの王立美術院で学びましたが、風景画を選びました。格下のジャンルです。正会員に選出されたのは1829年、五十三歳のときでした。遅い部類です。
彼は自分の作品がフランスでより高く評価されていることを知っていましたが、フランスへは行きませんでした。イギリスをほとんど離れたことがありません。
遺産と影響
2005年のBBCの世論調査で、この作品は「イギリスで最も偉大な絵画」の第2位に選ばれました。1位はターナーの『ファイティング・テメレール』でした。二点は同じ美術館にあります。
2022年7月4日には、気候活動団体「ジャスト・ストップ・オイル」の活動家二人がナショナル・ギャラリーでこの絵の前の柵を越え、自分たちが描き直した版を原作の上に貼り、額に手を接着しました。彼らの版では川が道路に変わり、地平線で工場が煙を上げ、荷車には古い洗濯機が積まれています。額とニス表面に損傷がありましたが修復され、絵は翌日に再び掛けられました。三か月後、同じ団体が同じ美術館でファン・ゴッホの『ひまわり』にトマトスープをかけます。
彼らがこの絵を選んだ理由は明確です。この画面は、イギリスの人々が自国を思い浮かべるときに使うイメージです。それを損なわれた形で見せることが、彼らの主張でした。
作品が見られる場所
まず確認していただきたいことがあります。この作品は2026年7月から10月4日まで、イングランド・サフォーク州イプスウィッチのクライストチャーチ・マンションで開かれている特別展《The Hay Wain: Walking Constable’s Landscape》に出ています。コンスタブル生誕250年記念プログラムの中心となる展示で、この絵が自らの描いた川の近くに来るのは205年ぶり、史上初めてのことです。事前予約が推奨されています。
したがってこの絵を目的にロンドンへ行かれる場合は、必ずナショナル・ギャラリーの公式サイトで現在の所在をご確認ください。貸出期間が延長または調整される可能性があります。
通常はロンドンのトラファルガー広場にあるナショナル・ギャラリーにあります。常設展示は無料で、開館はおおむね10時から18時、金曜は21時までです。展示室の配置は2025年の大規模な再配置以降変わっているため、現地の案内でご確認ください。
同じ美術館にターナーの『ファイティング・テメレール』と『雨、蒸気、速度』があります。同じ時期のイギリスで、一人は湿った田園を、もう一人は蒸気機関車を描いていました。二点を並べて見ると、その対比が明確になります。
絵の舞台となったサフォーク州フラットフォードも訪ねる価値があります。ウィリー・ロットの家は現存し、ナショナル・トラストが管理しています。
この絵の前で最後まで残るのは、平穏さではなく距離です。コンスタブルはロンドンのアトリエで、二百キロ離れた場所の湿った空気を記憶から作り直しました。彼が描いたのは目の前の風景ではなく、離れてきた場所です。
画像: The Hay Wain – ジョン・コンスタブル、1821年、ナショナル・ギャラリー(ロンドン)蔵。ライセンス: Public Domain. 出典: Wikimedia Commons.
